先日リニューアルオープンした ”へぎそば屋「わたや」” では、この仕事に就いて初めて工事期間中に一度も現場へ行くことなく竣工を迎えました。いままでは、たとえ海外であっても現場に足を運び、監督や職人さんたちと直に顔を合わせながら図面やデザイン意図を説明してきましたが、コロナの影響でそれができない状況となってしまいました。そのような状況で現場をうまく納めるには、いかに「伝える図面」を描けるかが鍵となります。図面は描かないと伝わらないですし、逆に情報を盛り込みすぎても伝わりにくくなります。物事を先回りして情報を整理し、わかりやすく(見やすく)まとめ上げる力が必要となるのです。このことは前職(リオタデザイン)在籍中に代表の関本さんから日々教えられ鍛え上げられました。それが血肉となり、いまの自分のベースになっています。
そんな当時何度も聞いた関本さんの「図面に対するこだわり」がこの度、学芸出版社から書籍化されました。退職して5年が経ちましたが、この本を読み当時関本さんから学んだことを思い出しながら、自分は間違えず進んでいるのだと確認させていただきました。設計をこれから学びたい学生さんや、初学者の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です!
「伝わる図面の描きかた」
昨年9月からリニューアルの計画を進めてきました新潟県小千谷市にある老舗へぎそば屋「わたや平沢店」がリニューアルオープン致しました。今年で創業100周年を迎えるわたやさんは地域に根付くお店として地元の方はもとより多くの観光客にも愛され続けるへぎそば屋さんです。「へぎそば」は織物の生産過程で使われる布海苔をつなぎに使ったお蕎麦で、昔から織物が盛んなこの地ならではの食べ物です。今回の計画は既存店の部分リノベーションで、物販スペースの拡張や新たな客席の設置などを行いました。地元の織物メーカーによるオリジナルの「手染め麻」、わたやの家紋である蔦をあしらえた「光琳蔦文様の江戸からかみ」「白太の杉格子」「左官壁」「織物の壁紙」「玄昌石」といった本物の素材と熟練の職人による技術を用いることで、先人への敬意と次の100年へつなぐ橋渡しとなるようなデザインを考えました。これから益々多くの方に愛され続けるお店になっていかれることを心から願っています。
お店は「越後つまりアートトリエンナーレ」が行われる十日町から車で30分程度の距離ですので、今夏開催のトリエンナーレに行かれた際には是非お立ち寄りいただけると嬉しいです。お蕎麦はもちろんのこと、わたや特製「緑のラー油」もお勧めです!
●わたやホームページ
●わたや平沢店_新潟県小千谷市平沢1-8-5
唐紙師 小泉幸雄氏(江戸からかみ伝統工芸士)による木版摺りの様子