伝わる図面

先日リニューアルオープンした ”へぎそば屋「わたや」” では、この仕事に就いて初めて工事期間中に一度も現場へ行くことなく竣工を迎えました。いままでは、たとえ海外であっても現場に足を運び、監督や職人さんたちと直に顔を合わせながら図面やデザイン意図を説明してきましたが、コロナの影響でそれができない状況となってしまいました。そのような状況で現場をうまく納めるには、いかに「伝える図面」を描けるかが鍵となります。図面は描かないと伝わらないですし、逆に情報を盛り込みすぎても伝わりにくくなります。物事を先回りして情報を整理し、わかりやすく(見やすく)まとめ上げる力が必要となるのです。このことは前職(リオタデザイン)在籍中に代表の関本さんから日々教えられ鍛え上げられました。それが血肉となり、いまの自分のベースになっています。

そんな当時何度も聞いた関本さんの「図面に対するこだわり」がこの度、学芸出版社から書籍化されました。退職して5年が経ちましたが、この本を読み当時関本さんから学んだことを思い出しながら、自分は間違えず進んでいるのだと確認させていただきました。設計をこれから学びたい学生さんや、初学者の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です!

「伝わる図面の描きかた」

210325図面の描き方

 

老舗へぎそば屋「わたや」

昨年9月からリニューアルの計画を進めてきました新潟県小千谷市にある老舗へぎそば屋「わたや平沢店」がリニューアルオープン致しました。今年で創業100周年を迎えるわたやさんは地域に根付くお店として地元の方はもとより多くの観光客にも愛され続けるへぎそば屋さんです。「へぎそば」は織物の生産過程で使われる布海苔をつなぎに使ったお蕎麦で、昔から織物が盛んなこの地ならではの食べ物です。今回の計画は既存店の部分リノベーションで、物販スペースの拡張や新たな客席の設置などを行いました。地元の織物メーカーによるオリジナルの「手染め麻」、わたやの家紋である蔦をあしらえた「光琳蔦文様の江戸からかみ」「白太の杉格子」「左官壁」「織物の壁紙」「玄昌石」といった本物の素材と熟練の職人による技術を用いることで、先人への敬意と次の100年へつなぐ橋渡しとなるようなデザインを考えました。これから益々多くの方に愛され続けるお店になっていかれることを心から願っています。
お店は「越後つまりアートトリエンナーレ」が行われる十日町から車で30分程度の距離ですので、今夏開催のトリエンナーレに行かれた際には是非お立ち寄りいただけると嬉しいです。お蕎麦はもちろんのこと、わたや特製「緑のラー油」もお勧めです!

●わたやホームページ
●わたや平沢店_新潟県小千谷市平沢1-8-5

210315ベンチ席01210315ベンチ席02210315江戸からかみ
唐紙師 小泉幸雄氏(江戸からかみ伝統工芸士)による木版摺りの様子

佐藤可士和 展

国立新美術館で開催中の「佐藤可士和展」へ。展示会の規模もさることながら、クリエイティブ・ディレクター佐藤可士和さんの仕事の規模とジャンルの枠を超えた多岐に渡るプロジェクトに圧倒させられました。一見、軽やかに見える作品の裏には徹底的に考えられた緻密な計算とディティールがある上に成り立っているのだと気づかされつつも、それを感じさせない普段の生活に違和感なく溶け込むデザインのバランスには、住宅デザインにも通じるところがあると感じました。グラフィックデザインの制作の裏側をあまり目にしたことがない自分にとって、第一線で活躍しているデザイナーのそれを観ることができたことはとても貴重な機会で、十分すぎるほどの刺激を受けました。子供も多く来場していて、小3の娘は普段良く目にするロゴマークや商品が美術館で展示されていることに驚きを感じながらも、クリエイティブな世界を体験でき、彼女にとっても良い刺激となったようです。IMG_5469 IMG_5490IMG_5491IMG_5493IMG_5478

↑写真だと分かりにくいですが、「0.5度」の精度でロゴの角度を指定しています。すごい世界です。