商店建築

大学生のころ、インテリアデザイン業界の情報を得るのはもっぱら月刊雑誌『商店建築』からでした。そこで最新のデザインに触れ、活躍するインテリアデザイナーを知り、たくさんの刺激を受けました。「いつか自分もこんなデザインがしたい」そんな思いを抱きながら学校の資料室の商店建築を読み漁っていました。

大学卒業後は辻村久信さんの事務所に入所し、担当させてもらったプロジェクトが初めて商店建築に掲載され自分の名前が載ったときは本当に嬉しかったことを思い出します。今でこそネットには情報が溢れ、世界中の様々なデザインを手軽に見ることができますが、この雑誌は今でも思い入れの深い身近な書籍です。

そんな商店建築2021年1月号に、デザインに携わったプロジェクトが独立して初めて掲載されました。お施主さんをはじめ、沢山の方々のご協力があり、素敵な空間が出来上がりました。全国の書店で取り扱いされていますので、是非お手に取っていただけると嬉しいです。

掲載:「himie aoyama / 南青山」ジュエリーショップ

商店建築 / 商店建築2021年1月号 (shotenkenchiku.com)

商店建築表紙

2年目のいえのこと

竣工してからちょうど2年が経った「だんだんの家」のお施主さんから嬉しいメールを頂きました。お施主さん了承の上で少しだけご紹介させていただきます。

「引き渡しからちょうど2年が経ちました。私たち家族が家に、そして家も私たち家族に馴染んできた感じがします。新築の時の真新しさも気持ちよかったし、少し傷がついてしまったりもしていますが、毎日とても心地よいです。家族それぞれに居心地の良い場所があるようで、畳スペースから自分で作った釣り糸を垂らして魚釣りをして遊んだり、ソファに寝転んで本を読んだり、ダイニングテーブルやスタディスペースやカウンターでお勉強をしたりと、それぞれの場所で気ままに過ごしています。5人全員が同じ2階にいても程よい距離感がありゆったりした気持ちで過ごせています。そしてそれぞれが思い思いに過ごしている姿をキッチンから眺めるのが私の幸せな時間です。家はもちろん、心地の良い暮らしを設計してくださって心から感謝しています。」

家づくりで1番大切なことは間取りを考えることではなく、家族でどんな時間を過ごし、どんな暮らしをしたいのかを考えることだと思っています。家づくりはいわば「これからどんな人生を過ごしていきたいのか」を考えることと同じだと思っています。人生は楽しいことばかりではありませんが、どんなときでも家族と寄り添い、家族と共に成長していける家をこれからも提案し続けていこうと、このメールをいただきその想いがますます強くなりました。Oさん、これからも末永いお付き合いをどうぞよろしくお願いいたします!
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アルミスプーン

私の実家からほど近くにあるアルミメーカー「アカオアルミ」。

非常に質の高い多様な加工技術を有していて、一円玉の原型、鍋や弁当箱といったアルミに関するあらゆる製品を製造しているメーカーである。

地元の人向けにセールなんかもやってくれて、高品質のキッチン製品がお手頃価格で購入できるとあって、その時は長蛇の列。子供連れで行くと、くじ引きやゲームで楽しませてくれたりして近所の家族連れで賑わう。我が家も例にもれず、雪平鍋やキッチンバット、おろし金など日々お世話になっている。

そのアカオアルミに先週、小学3年生の娘が社会科見学で訪れたという。私自身も小学生の頃同じように工場見学に行ったっけ。

前置きが長くなったが、その社会科見学で娘がお土産をもらってきた。

「アイス専用スプーン」

手に持ってみるとわかるのだが、それはふわりと軽く、絶妙なカーブ面とマットな表面仕上げのお陰か、金属なのにとても優しい手触り。

【 一緒に入っていた説明書より 】
・口当たりはやわらか。
・あなたの手のぬくもりがアイスに伝わりスプーンがスッと入っていく。

後者の文句に注目してほしい。
アルミ素材の特長といえば、熱伝導率が高く(鉄の3倍)、軽く(鉄や銅の3分の1)、腐食しにくい。
他にも加工性や再生性の高さなど、優れた特長がたくさんあるのだが、特に熱の伝わりの早さを考えた時、このアイススプーンがアルミ製であることの意味が理解できる。

冷凍庫から出したばかりのアイスは固い。

木製のアイススプーンも好きなんだけど、冷えッ冷えのアイスは固くて中々うまくすくえない。このアルミスプーンで食べてみるとあら不思議、カチカチアイスにスプーンがスッと入ってストレスなく冷えッ冷えアイスにありつける。

もうお分かりだと思うが、自分の手の熱がスプーンに伝わり、スプーンに触れた部分のアイスを優しく溶かすのだ。スプーンに触れた部分しか溶けないから、アイスは冷えッ冷えのままいただけるというわけ。

つまりこの小さなアイススプーン、アルミの特長を見事に生かした中々の優れものなのだ。

私の育った東京の端っこの町が誇る、老舗のアルミメーカーのお話でした。

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日常を愉しむ

娘の部屋にポスターを設えた。

たまたま家にあった本を眺めていた娘(9才)が一目惚れしたイラストレーター、ティモ・マンッタリさんの絵。
本には、綺麗な色使いでフィンランドサウナの様子を描いた可愛らしいイラストが掲載されていた。
娘がもっと他の絵もみたい!と言うので、一緒に探して彼女が選んだのがこの鳥たちが描かれた「バードツリー」という作品。

こんな風に、「この作家さんが好き!」なんて目をキラキラさせて話してくれたのはsousouのテキスタイルをデザインされている脇坂克二さんを知った時以来。それではと、これまで少しシンプルすぎた彼女の部屋に彩りを添えてもらうことにした。
ランドセルの横で静かに主張する鳥達。毎日学校の準備をするたびに、なんだかわくわくしそうだね。

家で過ごす事の多いこの頃、ちょっとしたことでいつもの日々をちょっと愉しく過ごせる。それが、今日も元気にすごす力になってくれるんじゃないかな、と気づかされる。

ポスターの影響か、昨日は4才の息子が朝起きるや否や沢山の鳥の絵を描き始めた。
鳥と言えば、事務所の玄関で出迎えてくれる赤い鳥の作者で、昨年87才で世を去ったフィンランドの偉大なガラスデザイナー、オイバ・トイッカ氏を想う。
さあ、今日はどんな鳥に会えるかな?

ケフボラデザイン「バードツリー」by ティモ・マンッタリ201207_blog_finポスターnew